神社にある狛犬ってなんなの?

「狛犬って?・・・犬?」という文字が中央に表示された、狛犬に関する記事のアイキャッチ画像 神社のあれこれ

〜守護獣の意味と、口のかたちに込められた願い〜

神社を訪れたとき、最初に目にするものといえば――そう、「鳥居」や「手水舎」と並んで、多くの人が気づくのが、神社の入口や拝殿前にたたずむ「狛犬(こまいぬ)」です。

この、どこか神秘的で力強い姿をした石像。よく見てみると、左右一対になっていて「片方は口を開き、もう片方は口を閉じている」というのが特徴です。でも、なぜ神社に狛犬がいるの?犬なの?ライオンなの?どんな意味があるの?――今回はそんな疑問にやさしくお答えしていきます。


狛犬ってなに?実は「犬」じゃない?

「狛犬(こまいぬ)」と聞くと、「犬の仲間なのかな?」と思いがちですが、実はその姿はライオンに近いともいわれています。起源をたどると、古代オリエントのライオン像が中国を経て日本に伝わり、仏教とともに寺院の守護獣として定着しました。それがやがて神道にも取り入れられ、神社でも見るようになったのです。

つまり、狛犬とは神様のそばにいて、悪霊やけがれを祓う役目を担う「守護獣(しゅごじゅう)」です。神社を訪れた人々が清らかな心でお参りできるよう、入口で悪いものを通さないように見張ってくれているのですね。


口の形に注目!「阿(あ)」と「吽(うん)」の意味

狛犬をよく観察すると、片方が口を大きく開けて「ア」と言っているように見え、もう片方は口を閉じて「ウン」としているのがわかります。この口の形には、深い意味があります。

これは「阿吽(あうん)」の呼吸で知られる仏教の概念に由来していて、「阿」は万物のはじまり、「吽」はその終わりを意味するとされています。つまり、「狛犬」は対になって、宇宙のはじまりから終わりまですべてを守ってくれる存在だということです。

また、「阿(あ)」は開かれた状態、「吽(うん)」は閉じた状態を表し、「息のはじまりと終わり」=「生命そのものの象徴」ともいわれます。神社の入口にいる狛犬たちは、そんな壮大な意味をもって、私たちを見守っているのです。


狛犬はどこにいるの?どんな種類がある?

狛犬は、ほとんどの神社で見ることができますが、場所によって少しずつ形や表情が異なります。たとえば、東京都の言問神社の狛犬には角がある「吽形(うんぎょう)」と、角のない「阿形(あぎょう)」がいます。これは仏教の影響が強く表れている例です。

また、古い時代の神社では、狛犬の代わりに「獅子・狛犬」のペアが並んでいたこともあります。片方がライオン、片方が犬のような姿をしていたこともあり、地域や時代によっても違いが見られるのが面白いところです。

さらに、狛犬に限らず、神社では神様の使いとして働く動物の像がいくつもあります。

  • 伏見稲荷大社の【狐】(神様のお使いとして、願いを稲荷神に届けてくれる存在)
  • 天満宮の【牛】(菅原道真公が聖地に運ばれた際に乗っていたとされる)
  • 大国主命に仕えた【鼠】(火難から救ったとされる忠義の象徴)

これらはすべて、神様を助ける「神使(しんし)」と呼ばれる存在で、神社に訪れた人々が神様の力を感じられるように、そこに置かれているのです。


狛犬に願いをかける?実はこんな言い伝えも

狛犬そのものには「神様のご神体」が宿っているわけではありませんが、長年人々に大切にされ、信仰の対象になってきたことで「霊的な力が宿る」とされることもあります。

また、地域によっては「狛犬に触れると無病息災」「口元をなでると話がうまくいく」など、さまざまな願かけがあることも。たとえば、牛の像の頭をなでると学力が上がるとされるように、狛犬にも“触れることで加護を得られる”という感覚は、昔から自然に根づいてきたのかもしれません。


狛犬は「神様」ではない?神様との違い

よく誤解されるのが、「狛犬=神様」と思われること。しかし、実際はそうではありません。狛犬はあくまで「神様のお使い」や「神域の守護者」であって、神そのものではないのです。

これは、稲荷神社にいる「狐」にも同じことがいえます。稲荷信仰では狐が願いを稲荷神に届けてくれる「神使」として崇められていますが、狐自体が神様ではありません。

つまり、狛犬は「神社の中に悪いものが入らないように守っている存在」であり、神様の力が宿る神聖な空間を守る“番犬”ならぬ“番獣”のような存在といえるでしょう。


狛犬を見るときのちょっとした楽しみ方

せっかく神社に行くなら、狛犬もじっくり見てみるのがおすすめです。実は、狛犬にはその神社独自の個性が表れていることが多く、次のようなポイントを意識してみると、より参拝が楽しくなります。

  • 口の開き方や表情:「あ」「うん」のバランスや、笑っているように見えるもの、怒っているように見えるものなどさまざま。
  • 体の模様や形:巻き毛のディテール、足元の玉や子獅子など、装飾的な意味も込められています。
  • 材質や色:石像が一般的ですが、木彫りや金属製の狛犬もあります。

中には“子ども狛犬”が一緒に彫られていたり、片方だけが古くてもう片方が新しいなど、面白い発見があることも。神社めぐりの際は、ぜひ狛犬ウォッチングもしてみてくださいね。


狛犬は、神社の入り口で見守ってくれる「神域の番人」

狛犬は、神社の入口や拝殿にたたずむ神聖な守護獣。口を開いた「阿形」、閉じた「吽形」が対となり、悪いものを祓い、神様の領域を守っています。その起源は仏教や古代オリエントにまでさかのぼり、日本では神様のお使い・神使として定着しました。

神様そのものではありませんが、神聖な存在を守るために働いてくれる大切なパートナー。神社に行ったらぜひ、狛犬にも「こんにちは」と心の中で挨拶してみてください。きっとあなたの願いが、清らかな心で神様に届く助けをしてくれるはずです。


狛犬は、神様のそばで神域を守る“番人”のような存在。
でも、神様に仕えているのは狛犬だけではありません。
神社にはほかにも、狐や牛、鼠、そして時には蛇や鶏、龍までも――さまざまな“神様の使い”が、人々の願いを見守っています。

次回は、そんな個性豊かな「神使(しんし)」たちに注目し、それぞれがどんな神様に仕え、どんなご利益をもたらしてくれるのかをご紹介していきます。

あなたの願いに寄り添ってくれる“神様の仲間たち”に、きっと出会えるはずです。


※この記事は文化的・スピリチュアル的観点に基づいた読み物です。特定の効果や信仰を保証するものではありません。

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